2026年4月、Cloudflareが「EmDash」という新しいCMSを発表したとき、私たちは驚きました。
そのわずか2か月前、自社サイトをWordPress、Astro、Cloudflareの組み合わせで作り直したばかりだったからです。記事を管理する仕組みと、訪問者が見るページを分ける。公開するページはあらかじめ作っておき、表示のたびにWordPressを動かさない。そんな構成です。
EmDashの発表を読んで、「ずいぶん似た方向に進んでいるな」と思いました。当時はまだ試験的な公開でしたが、9月28日には正式版の「EmDash 1.0」が登場。Cloudflareは自社の公式ブログも8月24日にEmDashへ移したと発表していました。
そこまで進んだのなら、私たちもWordPressをやめて、EmDashに移した方がいいのでしょうか。
新しいCMSが正式版になった。それがなぜ気になるのか
CMSとは、ホームページの記事や画像を管理する仕組みのことです。WordPressもその一つ。制作会社に頼まなくても、管理画面からお知らせを投稿できるのは、こうした仕組みのおかげです。
EmDashも、記事や画像を管理するためのCMSです。ただし、Webサイトを動かす仕組みがWordPressとは異なります。WordPressで使われているPHPというプログラムを使わず、Astroなどの技術を土台に作られています。
正式版になったというニュースだけなら、新製品の紹介で終わるかもしれません。
私たちが気になったのは、発表だけではなく、開発元自身がその運用まで踏み込んだことでした。試しに動かす段階から、実際のブログ運用へ進んだわけです。
もっとも、Cloudflareで使えていることが、ほかの会社のサイトにもそのまま当てはまるわけではありません。
WordPressで気になる、プラグインの問題
WordPressには、必要な機能を後から追加できる「プラグイン」があります。問い合わせフォーム、検索対策、予約機能。便利なので、多くのサイトで使われています。
一方、そのプラグインの更新が止まったり、安全上の問題が見つかったりすると、サイト全体に影響が及ぶことがあります。
EmDashは、この問題を意識して作られています。追加する機能を隔離して動かし、触れてよい情報や外部サービスを制限できる仕組みがあるのです。
ただし、EmDashの追加機能すべてが自動的に隔離されるわけではありません。サイト本体と一緒に動く形式も用意されているため、導入時の確認は欠かせません。
安全に運用できる可能性は広がりました。それでも、移行すれば保守が不要になるCMSではありません。
記事を移しても、ホームページがそのまま再現されるとは限らない
ここで、自社やご自身のホームページを思い浮かべてみてください。
お知らせや会社概要だけなら、新しいCMSへの移行は比較的考えやすいでしょう。ところが、商品一覧、採用応募、問い合わせフォーム、会員向けページなどが加わると、要件や構造が複雑になります。
EmDashにはWordPressから記事や画像などを取り込む機能があります。移行の手間を減らす助けにはなるでしょう。
でも、記事が移っただけでは、元のホームページが完成したことにはなりません。見た目を再現し、今使っている機能を作り直し、問い合わせが届くかを確かめる。検索エンジンが古いURLから新しいURLへたどれるようにする作業もあります。
こうした作業を省いてしまえば、公開した後に困るのはサイトを運営する人です。
「新しいCMSが出た」という理由だけで移行を決めるわけにはいかないのです。
AIから編集できることも、移行の決め手にはならない
EmDashは、AIを使って記事やサイトを操作する仕組みにも力を入れています。
この方向には期待しています。私たちは、記事の下書きや編集、公開前の確認にAIを使っています。このサイトの運用やセキュリティ検査、デザイン、コーディングでも、AIを活用しています。
ただ、WordPressでもAIによる編集は可能です。WordPressの公式開発者向けサイトでも、AIからWordPressを操作する方法が紹介されています。
AIを使えるかどうかだけで、CMSを入れ替える理由にはなりません。むしろ、AIにどこまで操作を許すのか、公開前に誰が確認するのかを決めておく方が、日々の仕事には大切です。
それでも、これからのサイトでは有力な候補になる
EmDashは正式版になり、改良も続いています。10月には、更新時に起きる不具合を直したバージョンも公開されました。
これを「不具合があるから使えない」と考えるつもりはありません。どんなCMSにも更新はあります。ただ、WordPressには長年の運用実績があり、EmDashはこれから経験を積んでいく製品です。使いたい機能がそろっているか、トラブルの際に復旧できるかは、導入前に確かめたいところです。
今後、新しく作る比較的シンプルなサイトなら、EmDashを候補に入れる価値はあります。反対に、WordPressで独自の機能を多数使っているサイトなら、今の仕組みを改良する方が無理のない場合もあるでしょう。
Cloudflare以外の環境でEmDashを動かす方法もありますが、どこで動かすにしても、料金や運用を誰が引き受けるかは考えなければなりません。

私たちは今、どうするのか
自社サイトについて、今すぐWordPressとAstroの構成を変える理由は見当たりません。
公開側はあらかじめ作ったページを配信し、WordPressは記事の管理に使う。役割を分けた現在の構成は、私たちの運用に合っています。どちらにしても、管理側のアップデートやセキュリティ対策など、日々の運用管理は疎かにしてはいけません。
EmDashが正式版になったことで、次にサイトを作り直すときの候補は増えました。ただ、今動いている構成を入れ替えるなら、現行の運用コスト、移行に伴うリスク、保守性やセキュリティへの影響を比較し、得られる改善が費用と手間に見合うかを判断する必要があります。
新しい技術を使うこと自体が、目的ではありません。
ホームページを任された人が、数年後も困らずに使い続けられるか。担当者が変わっても引き継げるか。何か起きたときに直せるか。
私たちは、そのことを確かめながら、これからのCMSを選んでいきたいと思います。



